- 2013-08-25 :
- 想い
延命と縁命

延命治療とは病気を根本的に治すことではなく、ただ命を延ばすことを目的とした治療のことで、対症療法の1つです。
人間の場合、延命治療を希望するかしないかは本人の判断によりますが、どうぶつたちの場合はご家族の判断に委ねられます。
昔の犬たちは放し飼いもあったので、最期を悟ったどうぶつ達は人のいないような所に行って亡くなったことが多かったように思われます。
現在は予防もしっかりしてきたのでどうぶつ達も長生きし癌等の病気を患い、余命を宣告されることも多くなってきました
猫のG君の場合顎に出来た癌のため食事も摂りずらくなってきました。日に日に痩せていく姿にご家族も心配され、ご相談に来院されました。癌は喉の方にまで進行していたため噛んだり呑み込んだりすることが出来なくなっていたのでしょう。鼻から栄養カテーテルを入れて流動食を食べさせてみては、と提案させていただき、カテーテルを鼻から入れ、胃まで届くようにつけました。
鼻から出たチューブは頭の後ろで止めているため見た目には可哀そうに見えてくるかもしれません。自宅の窓際でG君が寝ていると通りすがりの方から「猫さんどうしたの?」と、言われることも度々あったそうです。1日数回の栄養補給を経て、便も硬くなったり、柔らかくなったり、時々チューブが抜けたり詰まったりしてしまいましたが、G君の状態は痩せ衰えることもなく安定したまま最期を迎えることが出来ました。
犬のSちゃんもまた癌を患い転移もみられる患者さんです。やはり食欲も無く吐き気もある子でした。吐き気は制吐剤で治まりましたが、食欲は一向に回復しませんでした。そこで強制給餌を勧め自宅で行ってもらいました。すると、吐き気、下痢…という悪循環が少しずつよくなって、少量ですが食欲を見せてくれるようになりました。自分の体重を維持するほどの自発的食事量ではないので今でも強制給仕も一緒に行っていただいています。
強制給餌はご飯を口の中に強制的に入れて食べさせる方法です。やはり見た目には可哀そうに見えてしまいます。
以前勤めていた病院で強制給餌をしていたご家族が「どうせ亡くなるならあんなに無理やり食べさせなければよかった」と言われた方がいました。確かに亡くなった後となってはそう思えるのかもしれません。しかし、何も食べずに痩せ衰えていく姿を、ただ見てるだけでは忍びないものです。
一方、強制給餌をすることで自分自身も小さな家族に嫌なことを押し付けているようで可哀そうな気持ちと、自己満足ではないかと自分への自己嫌悪で気持ちが滅入ってしまうかもしれません。
しかしながら、強制給餌を続けていくうちに自分でご飯が食べられるようになることもあるのです。そういった意味ではどうぶつ達を助けるためにはとても大切なこととなります。
どのような方法を選択されるかはその子のことを十分理解して、長年ご一緒に過ごされたご家族のお気持ちひとつになります。その子と共にご家族が日々を暮らしに何を求めているのか、その子と共にご家族がどのようにしたら苦しまず楽しく暮らせるか、生活そのものの在り方について考えて決めていただくのがご家族になります。
そういった意味では“延命”は“ご家族とご縁ある命と書いて”縁命“と呼んでもいいのかもしれません。様々な生活パターンがあるので方法はひとつでは ありません。その、ご家族、ご家族の”ベスト“を選択していただくのが良いことだと思います。そんな時、少しでもお手伝い出来たら嬉しいです。
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